ケイヒ    

ケイヒはクスノキ科の常緑の高木です。 特にシナモンカシアと言われる樹皮を乾燥させた物で、褐色の巻き込んだ形状をしています。 シナモンカシアを大別すると、ベトナム産や中国産のカシアと、セイロン(現在のスリランカ)やインドネシア産のシナモンの系統に分かれます。 カシアの系統のケイヒは薬用として用い、シナモンの系統は食用に適しているとされていました。 近年、日本に輸入されるケイヒはほとんどカシア系統の中国産です。 日本薬局方では形状のわずかな差で、シナモン系統のケイヒは局方除外になりました。(シナモン系統のケイヒは薬効が無い、品質が悪いと言う事ではありません)

  ケイヒの葉は楠の葉と同様の形をしており、きれいな緑色です。 葉や幹には爽やかな芳香があります。 ケイヒの分布は中国南部、ベトナム、セイロンなど東南アジア南方全体です。 それぞれ中国産は広南ケイヒ・東興ケイヒ、ベトナム産はベトナムケイヒ、セイロン産はセイロンケイヒ、インドネシア産はジャワケイヒと呼ばれています。

 日本の市場では、中国産の広南ケイヒが主に流通しています。 三光丸もやはり広南ケイヒを主に使用しており、従来は香りを引き立たせるためにインドネシアケイヒを少量混合し使用していました。 今はインドネシアケイヒの代わりにベトナムケイヒを使用して、さらに香りを良くしています。

 日本産のケイヒとしてニッケイを紹介します。 ニッケイの樹皮(幹枝の皮)にはケイヒと同様の香りや成分は少なく、根の皮にケイヒと同様の香りや成分があり、ケイヒと同様に使用しても遜色ありません。 ただし、日本薬局方からは除外されており、現在は和歌山県や高知県の暖かい地方で一部栽培され、食用に使用されるだけです。

 ケイヒは薬としての歴史は古く、古代エジプトやギリシャの古文書にも出ています。 このエジプトやギリシャから中国に伝わり、漢薬として定着したようです。 漢方ではケイヒは薬味「辛・甘」、薬性「温」とされ、風寒を解し、四肢に横走し、経を温め、絡を通ず、と言われております。 このためケイヒは健胃、発汗、解熱、鎮痛薬として多くの処方に用いられています。 三光丸も健胃や鎮痛の目的として配合してあります。

 漢方の処方では、「桂枝湯」「桂枝加芍薬湯」「苓桂朮茯苓丸」など非常に多くの処方に配合されます。 これはケイヒの味や香りが良いので矯味や矯香のために用いられる事もありますが、多くの薬効を利用して配合される漢方処方の中でよく使用される成分の一つです。 この漢方処方の中で桂枝とあるのはシナモンカシアの枝の事で、古くは樹皮を使用していたからです。 最近は桂枝○○湯でも樹皮のケイヒを使用しています。

 ケイヒの成分は、香りからも分かるように香気の強い精油が1〜3%含まれ、このほとんどがケイアルデヒドです。 その他オイゲノール、ジテルペン類など多くの油性成分があります。 精油成分の他ではケイヒタンニンがあり、このタンニンには別の有効な薬効があるのではと注目されています。

 ケイヒの薬理作用としては水製エキスや精油成分等で解熱作用、抗アレルギー作用、血圧降下作用、体温降下作用、腸管運動促進作用、ストレス性胃びらん予防作用、胆汁分泌促進作用、抗菌作用、抗かび作用など非常に多くの有用な作用が確認されています。 このため三光丸を服用する事により、胃腸の諸症状に効果があるのはむろんの事、その他の諸症状が改善される事も有り得るわけです。

 先ほど少し触れましたが、ケイヒはもう一方で食品として非常に多く利用されています。 これは先に「シナモン」と書かれているので分かってる方も多いと思います。 ケイヒは食品ではシナモンの名称で香辛料としてカレー、ソース、焼き肉のたれなどに入っており、また、菓子の香りつけとして(京都の)八つ橋、アメ、ケーキなどに使用されています。 そして最近では喫茶店でシナモンコーヒーとしてケイヒの小片をカップに添えて出される事も多くなりました。 ケイヒの消費量は日本国内では薬として利用されるよりも、食品に利用される方がはるかに多いようです。

ケイヒ一口知識

1.

ケイヒは古代エジプトで、ミイラの防腐剤として使用された。

2.

正倉院の種々薬帳に「桂心」の名で出ている。

3.

日本では肉桂の細根を少量、赤い紙で束ね、縁日で売られていた。

4.

葉柄(葉の其の部分)を桂葉柄として精油の製造に使用される事もある。

5.

ケイヒの別名は「玉樹」「官桂」「陰香」「牡桂」「菌桂」。

6.

肉桂の種類はニッケイ、ヤブニッケイ、マルバニッケイの3種類が日本にある。

7.

日本には年間約1000〜1500トンのケイヒが輸入されている。

8.

ジテルペン類は日本の肉桂とジャワケイヒでは検出されてない。

9.

タンニン類には血中尿素類の低下作用がある。

10.

薬理は(1)血行を良くし体内を温める。(2)肝気・のぼせ・奔豚を鎮める。(3)自汗・悪寒・頭痛を治める。(4)身体痛(特に骨折痛)・胸腹痛・心痛・腹痛を治す。(5)呼吸器系及び皮膚の機能を整える。(6)解熱作用。(7)胃腸の機能を整える。 

11.

広南ケイヒではシナムアルデヒド(約1%)は多い。(鎮静作用を持つ)

12.

中枢抑制作用がある。

13.

麻酔作用もある。

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